店名の「火独楽」とは、陶芸家であった尾形乾山(おがたけんざん)(1663〜1743年)が書いた佐野道中記の文の中にある小さな部落の地名なのです。
この道中記によりますと、69歳の時、乾山は京より江戸へ向かい、次に佐野へ行っております。行った先が余程気に入ったとみえ、1年2ヶ月もの長い滞在を
しておりました。
その間、乾山は楽焼の窯を各所に築き、多くの作品をつくり、また沢山の焼物の下図を書くなど、佐野での充実した生活が伺われます。
特に越名河岸の仙庵に居たころに出かけた火こまの里や、静寂を打ち破るがごとき怒号の大滝のこと、蓬來山の山峡が、江戸へもどってからも懐かしく思い出され、忘れる事の出来ない思い出になったようです。
私は牛舌料理のこの店に、その乾山のイメージを盛り込んでみました。
例えば陶板の大型テーブルや、石積みの壁面や書画に、また鉄の照明器具や入り口の扉、椅子…など、あちこちに乾山の持つ優雅でしかも大胆な魅力を取り入れてみました。
そして、乾山が特に愛した火独楽の里の地名を牛舌料理の火にたくして店名と致しました。
どうか、牛舌料理共々、この店名をいつまでも可愛がって下さいますよう、従業員一同宜しくお願い申し上げます。
牛タン料理 火独楽
北迫倉弥太(きたさこ くらやた)拝
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